「公務員は安定」とよく言われますが、入庁したての新人職員の手取りが、実際いくらくらいか知っていますか?
前回の記事では、私の壮絶な1年目についてお話ししました。今回は「暮らしの土台」である家計について、リアルな体験談としてお話ししたいと思います。
この記事を読めば、公務員1年目のリアルな給与と生活費、そしてその中でどうやって貯金していたのかが分かります。これから公務員になる方、新社会人になったばかりの方の参考になれば嬉しいです。
初めての給料日を待つ、期待と不安
大学を卒業してから1年間、進路が決まっていなかった私にとって、「給料」というものは、学生時代のアルバイト代が全てでした。居酒屋で深夜から早朝までアルバイトをして、月に稼ぐのは大体6〜9万円程度。それが、私の金銭感覚の基準だったのです。
そんな私が、初めて正職員として働き、給料日を待つ日々。その心境は、一言で言えば「期待」と「不安」が入り混じった、不思議なものでした。
初給料で、何をしよう?膨らむ夢
頭の中では、来るべき初給料の使い道を、あれこれと想像していました。 「まずは、ここまで支えてくれた両親に、何か美味しいものでもご馳走したいな」 「学生時代には手が出せなかった、ちょっと良い服や靴も欲しい」 「今までのように値段を気にせず、本屋で好きなだけ本を買ってみたい」
アルバイト代とは桁が違うであろう「給料」という響きに、私の夢はどこまでも膨らんでいきました。
「公務員だから安泰だね」という言葉の重み
周りの友人や親戚からは、「公務員になったんだから、もう安泰だね」「お金の心配はなくていいね」といった言葉をかけられることも増えました。
その言葉に、素直に「そうだといいな」と思う自分と、「本当にそうなのだろうか?」と漠然とした不安を感じる自分がいました。 世間のイメージと、まだ見ぬ現実。そのギャップに対する、一抹の不安。
期待と不安が最高潮に達した、入庁後初めての給料日。 そこで私が目の当たりにした給与明細こそが、この『暮らし整える課』の、本当の始まりだったのかもしれません。
「支給約19.5万→手取り15万円台」の現実。給与明細をざっくり再現!

まずはじめに、これは私個人の給与明細そのものではなく、「大卒・行政職・一人暮らしの新人」の一般的なモデルケースです。細かい金額は、自治体や個人の状況によって異なりますので、あくまで一つの目安としてご覧ください。
支給額(プラスになるお金)の内訳
まず、口座に振り込まれる前の「額面」の給与です。
基本的には、「基本給」+「各種手当」で構成されます。
- 基本給(給料):約19万円
これが全ての基礎となる給料です。
公務員の給料は、「給料表」という級と号俸で機械的に決まります。
大卒の新規採用であれば、おおよそこの金額からスタートするのが一般的です。
(※お住まいの地域によっては、これに加えて『地域手当』が数%〜10数%上乗せされる場合もあります) - その他手当:約5,000円
これに、通勤距離に応じて支給される「通勤手当」や、賃貸住宅に住んでいる場合に支給される「住居手当」、そして残業した分の「時間外勤務手当」などが加算されます。
今回は、通勤手当として仮にこの金額で設定します。
【支給額 合計】:約195,000円
20万円に届かないのか…と感じる方も多いかもしれません。そして、ここからが本番。様々なものが引かれていきます。
控除額(マイナスになるお金)の内訳
次に、給料から天引きされる「控除」です。これには、法律で決まっているもの以外に、職場の慣習で引かれるものもあります。
- 共済組合掛金:約29,000円
公務員が加入する、健康保険と年金がセットになったものです。民間の会社でいう「健康保険料」と「厚生年金保険料」にあたります。
料率が比較的高く、新人の給与からも結構な額が引かれるため、多くの人が最初に驚くポイントです。ただ、その分、将来の年金や、病気や怪我をした際の給付は手厚いという側面もあります。 - 所得税:約4,000円
給与所得に対してかかる国の税金です。 - 住民税:0円
【新人時代の最重要ポイント!】
実は、住民税は前年の所得に対して課税されるため、社会人1年目は天引きされません。本格的に引かれ始めるのは、2年目の6月からです。
これを知らないと、2年目の手取りが月1万円以上ガクッと減って驚くことになるので、本当に要注意です。 - その他控除:約11,000円
この「その他控除」が、実は新人時代の家計を地味に圧迫します。
私の場合、内訳はこんな感じでした。- よく分からない保険・カード代: 入庁と同時に、職場で勧められるがままに共済の保険や組合のクレジットカードに入会…。断りづらい雰囲気の中で、何となく契約してしまう新人あるあるです。
- 課会費:1,000円
- 旅行積立金:5,000円
【控除額 合計】:約44,000円
そして、リアルな「手取り額」は…
【支給額 合計】約195,000円 – 【控除額 合計】約44,000円 =
【手取り額】:約151,000円
これが、実際に銀行口座に振り込まれる金額の目安です。法律で定められた控除だけでなく、職場の慣習による積立金なども引かれ、手取りは「15万円台」に。
学生時代のアルバイト代の倍以上にはなったものの、想像していたよりもずっと少ない金額。これが、私が向き合った社会人1年目のリアルな数字でした。
月15万円台でどう暮らす?1年目のリアルな生活費
手取り約15万円。
この金額で、新人公務員は一体どのような生活を送っていたのでしょうか?
ありがたいことに、当時の私は実家から職場に通っていました。そのリアルな生活費の内訳と、当時の心境を、家計簿を再現するような形でお話しします。
生活費の大黒柱「実家へのお金」:5万円
まず、毎月の支出で最も大きかったのが、実家に入れる5万円です。 これには、家賃、食費、水道光熱費などが含まれています。私が住んでいた地域で一人暮らしをすれば、家賃と光熱費だけでこの金額を超えてしまいます。そう考えると、金銭的にはかなり助けられていたと、今になって改めて感じます。
もちろん、良いことばかりではありませんでした。職場まで少し遠かったり、生活リズムを家族に合わせる必要があったりと、一人暮らしの友人たちが少し羨ましくなることも。
それでも、金銭的な余裕を全く持てなかった私にとって、実家暮らしは唯一の選択肢であり、最大のセーフティネットでした。
家計を圧迫した最大の敵、「交際費」:約5万円

次に大きかったのが、この交際費です。
月の給料の3分の1がここに消えていました。 この「交際費」は、大きく2つの要素で構成されていました。
一つは、「職場の付き合い」です。
新人という立場上、部署の歓迎会や飲み会は、まず断れません。「これも仕事のうちだ」と自分に言い聞かせ、参加していました。一次会で終わればまだ良いのですが、「二次会に行くぞ!」という流れになると、もちろん断れるはずもなく…。
一晩で1万円近く飛んでいくことも珍しくありませんでした。
そして、もう一つが、「デート代」です。
当時の私は「お金は男が出すものだ!」と、今思えば少し見栄を張って、カッコつけていたのです。もちろん、手取り15万円の身で、そんなことをしていては家計が成り立つはずもありません。
職場の飲み会で1万円、週末のデートで1万円…。そんな風にお金が消えていき、給料日前にはいつも財布の中が寂しくなっていました。
その他の固定費と変動費
- 通信費:約1万円
当時は、大手キャリアを使っていたため、毎月このくらいの支払いがありました。「いつか見直さなきゃ」と思いつつも、日々の忙しさで後回しになっていました。 - 車両費:約2万円
通勤やプライベートで使う車のガソリン代や、たまに使う高速代です。
正直、これでも足りず、お金のない時の車検や保険の支払いは、親に甘えてしまうこともありました。
情けない話ですが、これが現実でした。 - 雑費・娯楽費など:約2万円
書籍代や日用品の購入、友人とのたまの息抜きなど、いわゆる「自由なお金」です。交際費がかさんだ月は、この部分を切り詰めてなんとか生活していました。
【支出合計】:約15万円
【月の残り(貯金額)】:約1,000円
(手取り:約15万1千円 – 支出合計:約15万円)
衝撃の事実ですが、これが当時の私のリアルな収支でした。 この家計簿は、数字だけでは見えない「給料日前に銀行の残高を見てはため息をつく」といった、当時の私の心境そのものを表しています。
「このままでは、本当にまずい…」。
この現実が、私を本格的な「節約」と「貯金」へと突き動かす、大きなきっかけとなったのです。
頼みの綱!公務員のボーナス(期末・勤勉手当)のリアル
月々の手取りからは、ほとんど貯金ができなかった私。 そんな私が唯一の頼みの綱としていたのが、年に2回支給される「ボーナス」、正式には「期末手当・勤勉手当」です。
このボーナスがあったからこそ、なんとか年間での貯金をプラスにすることができました。 ここでは、その公務員のボーナスの実態について、詳しく解説していきます。
「期末手当」と「勤勉手当」って何が違うの?
公務員のボーナスは、実は2つの手当が合わさってできています。
- 期末手当
生計費を補助する目的で、在籍している職員全員に、ほぼ一律の割合で支給される手当です。民間でいうところの、固定で支給される賞与に近いイメージです。 - 勤勉手当
職員の勤務成績に応じて支給される手当です。こちらは、人事評価の結果によって支給額が変動する、成果給に近い部分と言えます。
支給割合は自治体によって差はありますが、年間でおおよそ給料の4ヶ月分強が支給されるのが一般的です。
これは、家計が厳しい新人時代にとって、まさに「頼みの綱」と言えるでしょう。
【最重要】新人の「夏のボーナス」は満額ではない!
しかし、新社会人が絶対に知っておくべき、大きな落とし穴があります。
それは、入庁して最初の6月のボーナスは、満額もらえないということです。
なぜなら、夏のボーナスは「前年の12月2日からその年の6月1日まで」の在籍期間に応じて支給額が決まるからです。
4月1日入庁の場合、在籍期間は約2ヶ月しかないため、その期間分が支給されます。 これを「在籍期間率」と言い、満額の3割程度になるのが一般的です。
私も例に漏れず、初めての夏のボーナスは数万円程度でした。
「え、これだけ…?」
同期のみんなと給与明細を見せ合い、「これじゃ、ちょっと良い飲み会に一回行ったら終わりだな」なんて話して、がっかりしたのを覚えています。
しかし、私はそのお金を、すべて両親へのプレゼントとして渡しました。
大学卒業後、1年間心配をかけたことへの、ほんの少しの罪滅ぼしと、感謝の気持ちのつもりでした。 もちろん、それで自分の手元には全くお金は残りませんでしたが、両親がとても喜んでくれたのを見て、飲み会で使うよりもずっと有意義な使い方だったと、心から思いました。
「ボーナスで色々買おう!」と期待していると、肩透かしを食らうので、新人の方は本当に注意してください。
冬のボーナスで、手取りはいくらになる?
では、在籍期間が満たされる冬のボーナスでは、一体いくら手元に残るのでしょうか。 大卒初任給(基本給約19.6万円)の新人職員のケースで、ざっくりシミュレーションしてみましょう。(※冬の支給分を、年間の約半分である給料の2.25ヶ月分として計算)
- 支給額:約44万円
- 控除額:約9万円
- 手取り額:約35万円
これが、冬のボー-ナスで実際に口座に振り込まれる金額の目安です。 夏のボーナスとのあまりの差に、「これが本当のボーナスか…!」と感動したのを覚えています。
私の貯金の源泉は、冬のボーナスだった

夏のボーナスは期待できなかったため、私が本格的に貯金を始めたのは、この冬のボーナスからでした。 手取りで約35万円というまとまった金額を、そのまま生活費口座とは別の貯金用口座に移す。そして、その口座は「ないもの」として、一切手を付けない。
この「冬のボーナスを聖域化する」ことこそが、月々の赤字を補って余りある、私の貯金の源泉だったのです。
唯一の貯金法。でも、それは不完全だった
月々の給料は生活費と交際費で消えていきましたが、冬のボーナスを聖域化する、というルールのおかげで、私の貯金口座には確かにまとまった金額が入っていました。
「自分も、意外とちゃんと貯金できているじゃないか」
通帳の数字が増えるのを見て、私は漠然とした安心感を覚え、少し得意な気持ちにさえなっていたのです。
しかし、このやり方には大きな穴がありました。 それは、「年間の総支出を全く把握していなかった」ということです。
聖域を崩壊させた、一通の「招待状」
その事実に気づかされたのは、社会人になって初めて、友人の結婚式に呼ばれた時でした。 親しい友人からの招待状に、心から「おめでとう!」と思いました。しかし、その喜びと同時に、ある現実に直面し、私の血の気は引いていきました。
「ご祝儀、3万円…どうしよう」
月々の生活費がカツカツな私にとって、3万円という金額は、あまりにも大きな出費でした。 結局、私は「聖域」としていたはずの、ボーナス用の貯金口座から、お金を引き出すしかありませんでした。
この時、私は痛感したのです。 この貯金は、本当の意味での「貯金」ではない。ただの「計画性のない、どんぶり勘定のツケを払うための一時的なお金置き場」に過ぎなかったのだと。
その他、新人時代の家計を襲う「年間支出」の刺客たち
ご祝儀のように、月々の支出とは別に、年間で突然やってくる大きな支出は、他にもたくさんあります。
- 自動車税・車検代
- 保険料の年払い
- 冠婚葬祭(ご祝儀、香典)
- 帰省費用(お盆・年末年始)
これらの「年間支出」を全く考慮に入れていなかったため、せっかくボーナスから貯金したはずのお金も、こうした突発的な支出があるたびに、切り崩していくことになりました。
この「どんぶり勘定」だった新人時代の大きな反省こそが、後に私が本格的に家計管理を学び、「暮らしを整える」ことの重要性に気づく、本当のきっかけになったのです。
【まとめ】1年目の失敗が、未来の自分を助けてくれた
ここまで、私の社会人1年目の、リアルなお金の失敗談をお話ししました。 「月々の貯金はほぼゼロ」「どんぶり勘定で、ボーナスもいつの間にか消えていく」。まさに、暮らしが全く整っていない状態でした。
この時の「どんぶり勘定」の失敗と反省が、数年後、私が本格的に『暮らしをえる』ための、大きな原動力となったのです。
では、この悲惨な状況から、具体的にどうやって家計を立て直したのか?
その方法は、結婚などを機に本気で家計改善に取り組んだ、こちらの9記事目で詳しく解説しています。 当時は全くできていなかった、効果絶大だった3つのこと(固定費の見直し、家計簿アプリ、お金の勉強)を、余すところなく書きました。
【共働き公務員夫婦】我が家のリアルな家計管理。見直しで効果絶大だった3つのこと
もしよろしければ、この後の「解決編」として、続けてお読みいただけると嬉しいです。 あなたの家計を整えるヒントが、きっと見つかるはずです。